彬子女王殿下御言葉
全氏青協創立六十周年記念式典
本日ここに、全国氏子青年協議会創立六十周年記念大会が、大勢の関係者をお迎へして開催されますことをたいへん嬉しく思ひます。
昭和三十八年十月二十六日、明治神宮において全国氏子青年協議会結成大会が挙行され、全国氏子青年協議会が発足しました。新しい日本の担ひ手としての自覚に立って、惟神の大道に従ひ、明るく豊かな社会の建設を誓ふことを宣言され、現在まで活動を続けてこられたと伺ってをりますが、全国氏子青年協議会が誕生した、ここ明治神宮で、全国氏子青年協議会の還暦のお祝ひが開催されるといふことは、洵に感慨深いものだと感じてをります。
戦後の急激な社会変革により、多くの若者が都市部に出ていくやうになり、地域の共同体や家の意識が薄れ、もともと存在してゐた地域の青年団などが機能しなくなっていきました。元来地域の中心であり、人々の心の拠り所である神社を守っていくために、神道青年全国協議会、そして、全国氏子青年協議会が組織されました。現在はその頃よりも状況が進み、地域の結びつきはさらに稀薄になってゐるやうに感じます。このやうな時であるからこそ、氏子青年協議会の皆様のお力が、重要になってくるのではないでせうか。
子供たちに本物の日本文化を伝へるために、心游舎を創設して十年以上が経ちますが、子供たちの反応にハッとさせられることがよくあります。半日のワークショップですと、あまり他の参加者の子と交流しないまま終はることもありますが、二泊三日のキャンプでは、いつの間にか子供同士のコミュニティができあがります。こちらから頼まなくても、年上のお兄さんお姉さんたちが、自然と下の子の面倒を見ますし、前年は一番年下で、甘えて泣いてゐた子も、翌年自分より年下の子が来ると、急にしっかりして「ここでお辞儀をするんだよ」とか「私が連れて行ってあげる」など、世話を焼きだします。廊下を走ってゐるのをこちらが注意しても生返事なのに、リーダー格の子供が注意するときちんと聞きます。昔の地域の共同体といふものは、このやうに形作られてゐたのだらうと実感いたしました。
地域のお祭りが盛んな所は、この共同体の在り方が、いまもしっかりと息づいてゐるやうに思ひます。お兄さんがお祭りのお役をかっこよく務める姿が、子供たちの心に残り、「いつか大きくなったら自分もあのお役をやりたい」といふ憧れになり、お祭りに毎年参加することが、地域の神社、そしてコミュニティを大切にすることへと繋がっていきます。
全国氏子青年協議会の皆様には、全国の子供たちの憧れのお兄さん・お姉さんとして、これからも日本の未来のために尽力していただけたらと思ひます。
全国氏子青年協議会が、次の七十年、百年へと発展していきますことを祈りつつ、私よりの御挨拶といたします。